修了生インタビューFashion Technology Course Alumni Interview

松尾 みどり

株式会社ゴールドウイン

パタンナー

松尾 みどり

ファッションテクノロジーコース 第7期生

PROFILE

2009年文化服装学院アパレルデザイン科を卒業後、渡米。
2012年、文化ファッション大学院大学(BFGU)入学。2014年修了後、
株式会社イッセイミヤケを経て、2020年に株式会社ゴールドウインに入社。

イメージだけでは実現できない 「形にする」ことの難しさ

もともとはデザイナー志望だった私が、パターンを学びたいと思ったきっかけは、ニューヨークでのインターン経験でした。1年半、ヴェラ・ウォンでクリエイティブディレクターのアシスタントをしていたのですが、ニューヨークのファッション界は、映画『プラダを着た悪魔』(2006年)そのままの華々しくも厳しい実力主義の世界。デザインからパターンまで一貫して行われるスピード感のある現場で、様々なサポートをする中、自分がイメージしたフォルムをうまく「形にする」ことができず、悔しい思いをして。
力不足を感じる一方で、名だたるブランドを支えている多くの日本人パタンナーに会い、パターンの分野では日本の技術や精度が高く評価され、世界で求められているという気づきもあったんです。あらためて自分の土台を築くため、日本に帰ってパターンを勉強しようと考えました。

新しい技術や知識を取り入れて 期待を超える提案を

数ある学校からBFGUを選んだのは、業界をリードする企業で活躍されてきた先生方の指導を受けられるから。中でもCADを使った授業では、1ミリに満たない線の差が製品の美しさを生むことを直に教えていただきました。また、デザインとパターンの落とし込みは、最初の就職先であり、立体感のあるシルエットを追求するイッセイミヤケでの仕事に活きましたね。

2020年には、山登りの趣味が高じて、アウトドアブランドを手がけるゴールドウインに転職。現在は『ザ・ノース・フェイス』のパタンナーとして、ライフスタイルウェアからアスレチックアイテムまで、幅広く担当しています。
特にスポーツウェアの分野では最新の素材や技術に触れる機会が多く、開発的な側面も。特殊加工や溶着を扱っていたBFGUでの研究が糧になっています。パターンは経験がものをいう仕事。技術や知識を高めるほど、デザイナーや工場の方々と一緒になって、驚きや喜びのあるアイデアを形にして発信していけると思っています。
大事にしているのは、与えられたデザインどおりにつくるだけではなく、自分なりの発見を取り入れて、よりよいシルエットや機能を提案することです。BFGU在学中にデザインコースの方と一緒に服をつくるカリキュラムがあり、「相手に遠慮して意見を控えるより、気づいた改善点をちゃんと伝えたほうが、いいものづくりができる」と身をもって実感したことが、背中を押してくれています。

サステナビリティが問われる今の時代、「ゴールドウインの仕事で、世界をよりよく変えられるかもしれない」という社長の言葉に可能性を感じ、私も生地の織り方や縫製方法を模索する日々です。環境負荷が低い素材、肌あたりがよくて長く着られる加工、廃棄を減らす生地の使い方など、新たな価値を製品に込めて、人を幸せにするような仕事をしていきたい。そのために、今後も精進していけたらと思っています。

MESSAGE

仕事に対する考え方や進め方は会社によって異なるものですが、就職、転職後に不安なく取り組めているのは、型紙の設計、グレーディング、マーキング、仕様書作成までのすべてを、BFGUで学んだおかげ。そして、超音波ミシンや溶着機など学内設備を自由に使えたこと、工場見学に伺って生産過程を理解していたことも非常に役立っています。
第一線を知る先生方の密度の高い教えが基盤となり、将来どの会社に入っても戦力になることができると思います。それでいて、どの授業も和やか。学校に通うのがまったく苦ではなく、今でもたまに「戻って学びたい」「先生に質問したい」と思うほどです。自分の研究にも時間をかけられる環境なので、ぜひ楽しみながら好きなことを突き詰めていただきたいですね。